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翼文庫
Little Hiyori and Tyobi
~りんご物語~
~目次~
・タルト・タタン
~タタン姉妹の物語
・りんごの重ね焼き
~『台所のメアリー・ポピンズ』
・野生のりんごの砂糖漬け
~『赤毛のアン』マリラの保存食
・アプフェルストゥーデル
~お菓子のルーツを紐解くと
・『りんごの木の上のおばあさん』
~心のバランス
・『サイダーハウスルール』
~アップルサイダー
・『カルタゴの薔薇』
~人工知能とアップルパイの匂い
タルト・タタン
~タタン姉妹の物語
19世紀末、ステファニーとカロリーヌ姉妹は、フランスの田舎町でホテルを営んでいました。
料理を担当するのは姉のステファニー。
お客たちの間を小鹿のように飛びまわるステファニー・タタン。お喋りなお客からやっと開放されて厨房へ戻ったステファニーは、デザートを作り忘れていたことに気づきます。
慌てた彼女は、型にバターと砂糖とりんごを詰めてオーブンに放り込みました。
すぐに、砂糖の焦げる甘い匂いがしてきました。型の底にタルト生地を引くのを忘れていたのです!
ステファニーは、少量の生地を伸ばすとりんごの上にのせ、再びオーブンに入れました。
それから、焼き上がったタルトを丸ごとひっくり返すと、澄ました顔をしてテーブルに運んだのでした。
タルト・タタン誕生の話は、その美味しさに感動した美食家のコルノンスキーがガイドブックに載せるにあたって考え出した物語という説もあるそうです。
アンカー 1
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【レシピ】
【フライパンで作るタルト・タタン風りんごケーキ】
りんご1個をスライサーでスライスします。
ホットケーキミックスにスライスしたりんごを混ぜこみ、フライパンで焼きます。
カットしたりんごを砂糖と水で煮詰め、カラメル状になったら火をとめ、ケーキの上にのせます。
砂糖少なめりんごたっぷり、フライパンでつくれます。
『台所のメアリー・ポピンズ』には、お話とレシピが載っています。
料理人ブリルばあやが、一週間家を留守にすることになった時、子供たちとメアリー・ポピンズで料理するお話です。
イギリスの定番料理やデザートが登場します。
シンプルでりんごの旨味がたっぷりの”りんごの重ね焼き”をご紹介します。
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【レシピ】
器の底にパン粉を振り広げます。りんごを薄く切って並べたら、ちぎったバターを散らします。
その上に黒砂糖をふりかけ、パン粉、りんご、ちぎったバターの順に層を重ねていきます。
一番上は、パン粉を少し多めにします。あとはオーブンで焼くだけ。
いただく時は、少し冷まして、あればクリームを添えます。
りんごの重ね焼き
『台所のメアリー・ポピンズ』
P.L.トラヴァース (著), メアリー・シェパード (イラスト), 小宮由(おはなし) (翻訳)
映画では優しく賢く明るいメアリー・ポピンズ。でも原作のメアリー・ポピンズはちょっと威圧的で、それにうぬぼれやの一面ももっています。
子供たちは、本当に心躍る冒険へ連れて行ってくれるメアリー・ポピンズに真実の優しさを感じています。だからこそ、時に冷ややかなメアリー・ポピンズの言動も受け流しながすことができます。彼女と一緒に不思議な事件や冒険を心の底から楽しんでいます。
~Tea break~
りんごが小道具の物語といえば白雪姫。
白雪姫を毒りんごで死に至らしめた継母は、グリム童話の初稿では実母だったそう。
ラストには、母親に熱く焼かれた靴を履かされて踊り続けさせるという白雪姫の復讐の場面がありました。
存在感の薄い父親と嫉妬深い母親の犠牲になる白雪姫。そして純真な乙女もその心の奥に復讐心を抱くように、、。怖い、怖すぎます。機能不全家族の究極の物語だったとは、、。
野生のりんごの砂糖漬け
マリラの保存食
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『赤毛のアン』は血の繋がらない家族の物語。
孤児のアンを独身で過ごしてきたマリラとマシューが引き取ります。
この時マリラは50歳を過ぎていて、マシューも60代。本当は手にあまるようになった農作業を手伝ってもらうため男の子を希望していました。
でもアンを引き取った二人は、アンの成長を見守り、かけがえのない家族となります。
野生のりんごの砂糖漬けは、マリラの保存食レシピの一つです。トーストやパンケーキ、肉料理に添えられて、大活躍します。
ルーシー・モンゴメリ著
村岡花子訳
新潮社文庫
【レシピ】
ボールの中で砂糖にまぶしてから、卓上漬物器で漬けてみました。
本当はりんごと砂糖を交互に重ねていきます。
二日目には、水分の中に浸かっていて良い感じでした。
三日目以降からが、食べごろです。
朝食のトーストと一緒にいただきました。バターの風味と合って、とても美味しかったです。
作者のモンゴメリ自身は婚約中に、ほかの男性に夢中になるなど情熱的な一面がありました。
また、年下の文学青年との文通の中で、理想の世界と現実の世界が決して同じでない事を打ち明けています。
ルーシー・モンゴメリ(著), メアリー ルビオ (編集), エリザベス ウォータストン (編集), L.M. Montgomery (原著), Mary Rubio (原著), Elizabeth Waterston (原著), 桂 宥子 (翻訳)
立風書房
アプフェルストゥーデル
~お菓子のルーツを紐とくと
アンカー 4
薄く伸ばした生地にスライスしたりんごを並べ、砂糖をふりかけます。レモン果汁をふりかけたら、長細く巻いていきます。
溶かしバターをかけてオーブンで焼きます。
【生地】
薄力粉50g 強力粉50g 水70ml 塩
・ナッツや干しブドウを入れるレシピもあり。
アプフェルストゥーデルはオーストリアを代表するお菓子です。
ハンガリー人がトルコの菓子バクラヴァの生地でリンゴを包んだのが始まりとか、、。
バクラヴァは、オスマン帝国で発明されたお菓子で、生地の間にナッツを挟んだもの。
オスマン帝国がヨーロッパの中央まで迫った歴史や在りし日のオーストリア・ハンガリー帝国に思いを馳せながらいただきました。
16世紀のオスマン帝国の領土
カトリーヌ・ド・メディチの婚姻によって、イタリアからフランスにもたらされたお菓子や食事のエピソード他、フランスのお菓子のこぼれ話。(岩波ジュニア新書)
アンカー 5
池上俊一著
岩波ジュニア新書
りんごの木の上のおばあさん
~心のバランス
オーストリアの児童文学。自分にはおばあさんがいないことをさびしく思っていたアンディは、なんと、家のリンゴの木におばあさんを見つけます。いっしょに、遊園地へ行ったり、草原で馬をつかまえたりして楽しい時間を過ごします。
そんなある日、アンディは、おとなりに引っ越してきたおばあさんと知り合います。料理をしたり、片付けをてつだったり、花壇をつくったり、なんとかおばあさんの力になろうとするアンディ。いつのまにか、さびしい気持ちはどこかにいっていました。
アンディの心がバランスをとるためには、やじろべえの重りのように、二人のおばあさんともが必要でした。
ミラ・ローベ (著)
,塩谷 太郎 (翻訳)
岩波少年文庫
隣の家のおばあさんが、アンディのお手伝いのお礼に、すもものケーキを焼いて届けてくれました。お礼のケーキをもらって、アンディは、自分がおばあさんの力になれたことを知ります。
サイダーハウスルール
アンカー 6
~正義と愛の十字路に立つとき
ホーマーは孤児院で生まれ育ちます。望まない妊娠をした女性の堕胎手術をするラーチ医師を手伝いながらその技術を身につけていきます。
孤児院の外の世界に憧れているホーマーは、中絶手術のため孤児院を訪れた陸軍中尉のウォリーとキャディの車に乗せてもらって孤児院を離れます。
1994年の春のことでした。
旅先のサイダーハウス(りんご園)で働くことになったホーマーは、そこで直面した現実の中で、善悪だけでは割り切れない人の世の姿を理解します。
ラーチ医師とホーマーは、父と子のような関係です。孤児院はホーマーの家のような場所。
夜孤児院の屋根裏には、ラーチ医師が子どもたちに寝かしつける読み聞かせの声が静かに響きます。ラーチ医師はホーマーに自分の跡を継いで欲しいと願っていました。
ラーチ医師の死を知ったホーマーは、彼の跡をつぐために孤児院へと戻るのでした。
ジョン・アーヴィングは映画化にあたって脚本を自ら書きました。アカデミー脚色賞を受賞。
ラーチ医師は、毎晩読み聞かせをします。それから「おやすみメインの王子たち。ニューイングランドの王たち」と子供たちに挨拶するのでした。
アップルサイダー
【アイス】
りんごをすりおろして炭酸水と混ぜます。ショウガ、レモン果汁、蜂蜜と一緒に!
【ホット】
りんごジュースとオレンジの皮シナモンスティックを挿したりんご、八角などと一緒にを煮立てます。
サイダーハウスとは、りんごの収穫やジュースなどの加工を行うため黒人の季節労働者が寝泊まりする建物
です。
『パルモア病院日記』
周産期医療の立ち上げに尽くした三宅医師を追ったノンフィクション。小さな命を守ろうと奮闘し、日本の医療界に革命を起こした医師たちの軌跡。命とは、家族とは何かを考えさせられる一冊。
中平邦彦著 新潮文庫
アンカー 7
カルタゴの薔薇
~人工知能とアップルパイの匂い
”わたしは、ジョナサンに歯をたて、その素晴らしい酸味を体中に行きわたらせる”
AI研究者の妹をもつ”わたし”はアップルパイを作るのが得意です。その秘訣はジョナサン(紅玉)だけを使うこと。
妹のリズは、自分自身を実験台に脳をスキャンし記録することで人格をクラウド上にアップロードしようとしています。辛い過去がリズを研究へと駆り立てているのでした。
実験中に亡くなった妹の死から、姉である”わたし”は自分の生を見つめ直します。
そして、パイを焼き、はがきを整理し、朝日とコーヒーの香りを嗅ぎ、思う存分にジョナサンを味わいながら自分が死ぬ順番を待ちたいと考えるのでした。
―ケン・リュウ短編集『生まれ変わり』より『カルタゴの薔薇』
お読みいただきありがとうございました。
りんごが登場する家族の物語を紹介してみました。
ちょっと怖い白雪姫の初稿版。
学問的興味から昔話を集めていたグリム兄弟、初稿版には人間の恐ろしさがそのまま反映されていたのかもしれません。版を重ねるごとに、子供むけに書きかえられていきました。
メアリー・ポピンズとバンクス家の子供たちの距離感がとても好きです。
メアリー・ポピンズのちょっと拗らせた感じの言動をサラっと受け流す子供たち。ポピンズのちょっと不器用な愛情表現、とても魅力的な物語です。
それから『りんごの木の上のおばあさん』は、のびのびと空想の世界に浸ることと、小さなことでも誰かの役に立つこと、その両方が子どもの心の成長に大切なことを教えてくれます。
この二つのお話は、子どもが家庭や学校以外の居場所を見つけるのが良いなと思いました。
「サイダーハウスルール」と「パルモア病院日記」は、人間と向き合う医師の物語です。命と家族をとりまく地域と人々、大きな繋がりの渦を感じました。
翼文庫の秋は、お菓子の旅と短編特集をします!お楽しみに!
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