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翼文庫
Little Hiyori and Tyobi
(前回)散歩の途中で今にも死にそうな弱った子猫をみつけた女の子。
子猫を心配するうちに、天国があるかどうかも気になりだしました。
図書館の本でしらべてみればとお姉さんに教えてもらい… ⇒(チョビとひよりの街1)
さて、次の日は土曜日でした。
女の子はチョビを連れて街の図書館に行ってみました。
そこはとても立派な大きな建物でした。
『わー!ダメダメ!犬はだめだよ!』
大きな声で呼び止められて女の子はびっくりしました。
メガネをかけた背の高いお兄さんが追いかけてきました。
そして図書館に犬や動物は入れないと説明してくれました。
「これじゃあ答えを探すことができないねチョビ・・・」
チョビと一緒に家にもどろうと小さな路地をまがったそのとき、小さな小さな看板が目に入りました。
『ひより図書館・・・ここって図書館?』
玄関の横のアーチには、つるバラがこぼれるように咲いています。
女の子がおそるおそるのぞくと、ローズマリーやラベンダーの茂みの向こうにブラブラとゆれる子供の足が見えました。
言われたとおりに庭に出るとさっきの女の人が小さなテーブルとイスを運んできました。
「さぁ、この木にワンちゃんをつないで。」大きなけやきの木を指して女の人が言いました。
「あの、ここは図書館なんですか?」
「もちろん。」
というと小さな冊子をテーブルの上に置いていきました。
どうやら図書館案内のようです。女の子はページをめくってみました。
その時玄関が開いて一人の若い女の人が出てきて言いました。
「ワンちゃんが一緒ね。お庭からまわってきてもらえる?」
女の子がバラのアーチをくぐって進んでいくと男の子が掃き出しの窓に腰かけて本を読んでいました。開け放たれた窓からたくさんの本棚が見えます。
どうやらここは図書館みたいです。
しばらくすると女の人がトレイとバスケットを持ってもどってきました。
トレイにはホットミルクとビスケット。バスケットには本がたくさん入っています。
女の子がお礼を言う間もなく、女の人は忙しそうにさっさっと家の奥に入っていってしまいました。
本を読んでいた男の子が立ち上がって表紙が見えたのです。
女の子はどうしてもその本が読みたくなりました。
女の子があんまり見つめたせいでしょうか、男の子がスタスタとやってきました。
そして女の子のことをじっと見返しました。
おもわず女の子はしらんぷりをしました。
すると男の子は何も言わずにバスケットの中にポンと自分の持っていた絵本を入れて行きました。
ホットミルクからミントのいい匂いがしました。
家の中では大人や子供が本を選んだり読んだりしています。
「あっ!」
女の子は突然小さく叫びました。
ハンス・フィッシャー (著)
石井 桃子 (翻訳)
どれくらい時間がたったでしょう。一生懸命絵本を見ていた間に長い時間がたったようです。木陰は長く伸びています。少し寒くて女の子はブルブルと肩を震わせました。
「ごちそうさまでした!」女の子は家の中にむかってお礼を言うと絵本をバスケットに返してチョビと走り出しました。
その絵本は外国のことばで書いてありました。
女の子はお話を想像しながら挿絵を順番に眺めていきました。
「ここにいたのね。あの子猫。」
ほっとした様子で女の子はつぶやきました。
「へぇぇ?そんな図書館あったかしら?」
台所で夕飯の準備をしながらお姉さんが言いました。
「そうそう!そうい えば居間の本棚に、天国とか地獄とか出てくる本があったわよ。」
お姉さんは女の子の話を聞きながら一冊の本をテーブルの上に置きました。表紙には恐ろしい顔をした男の人の絵が描いてありました。
「”カンダタ”っていうのよ。」お姉さんはそっけなく言いました。
『芥川龍之介著
遠山 繁年 絵
偕成社
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