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​~春の夢~
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​ポカポカ陽気の春、、。心地良い眠りに浸りたいですね。今回は夢がテーマの物語を紹介したいと思います。
​『夢の中の夢』タブッキ
​『夢十夜』夏目漱石
​『マリアンヌの夢』キャサリン・ストー
​『杜子春』芥川龍之介
『杜子春』芥川龍之介

 唐の都洛陽の西の門の下で、ぼんやり空を仰ぐ一人の若者”杜子春”の物語。

 もとは裕福だった杜子春は、放蕩のすえに財産を使い果たし途方に暮れています。そこへ一人の老人があらわれて彼に大金持ちになる”夢”を見せます。
 金に釣られて集まってくる人間の醜さからすっかり人間嫌いになってしまった杜子春は、金持ちになるよりも「仙人になりたい。」というのですが、、。

 老人は「仙人になるためには何があっても喋ってはならない」と杜子春に言い渡します。黙り通していた杜子春でしたが、地獄で馬に変えられ鞭うたれる母親の「私たちはどうなってもいいから、お前さえ幸せになってくれればいいから、言いたくないことは黙っておいで」とい言葉を聞いて思わず「お母さん!」と叫ぶのでした。
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​本当の幸せとは?

 芥川の「杜子春」は原典である唐伝奇小説「杜子春伝」とはかなり違った内容と結末になっています。「杜子春伝」では季節は冬でしたが、芥川は春の夢としてこの物語を描きました。「赤い鳥」に掲載された杜子春の物語、子供たちの心に届くよう”春の夢”にのせて描いたのでしょう。
​ 本当の幸せとはお金で買えるものではないのですよ、、彼のそんな呟きが聞こえてきそうです。
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​洛陽燕菜
『夢の中の夢』タブッキ

 ゴヤ、ランボー、フロイト、ドビュッシー、、過去の巨匠たちが見たかもしれない夢を夢想した二十の短編が収められています。
 画家にして幻視者ゴヤの夢、他人の夢の解釈者フロイトの夢、作家にして医師チェーホフの夢、、。そして巻末には『この書物の中で夢見る人』として、それぞれの人物たちの紹介があります。

 『詩人にして月に魅せられた男ジャコモ・レオパルディの夢』
 晩春の美しい夜、銀色に輝く砂漠で一人の詩人が見つけるのは、総ガラス張りの菓子屋さん!黄緑色のピスタチオのケーキ、葡萄色の木苺のケーキ、レモンケーキ、、などなどが並びます。
 お菓子屋さんの先の小さな家で待っていたのは月の住人を名のる少女。彼女の身体は銀色に輝いています。少女は彼に向かって言います。「あなたは眠っているだけ、そして月を夢見ているの」
​ とても不思議だけど胸に響くお話でした。
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​ザバトーネ入りシュークリーム
銀色に輝く砂漠に突如出現するお菓子屋さん、、夢ならではの景色ですね。
​ところで一つ知らないお菓子の名前があったのですが、「ザバイオーネ」というお菓子です。ワインの入ったカスタードクリームのことらしいです。

 
『夢十夜』夏目漱石

 「百年、私の墓の傍そばに坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」と言い残して死にゆく美しい女。
 待てますか?百年。
 
 美しく哀しい愛の結末は、、

『…それでも百年がまだ来ない。しまいには、苔の生はえた丸い石を眺めて、自分は女に欺だまされたのではなかろうかと思い出した。
 すると石の下から斜に自分の方へ向いて青い茎くきが伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺らぐ茎くきの頂きに、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらとはなびらを開いた。真白な百合ゆりが鼻の先で骨に徹こたえるほど匂った。そこへ遥かの上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の滴したたる、白い花弁に接吻せっぷんした。自分が百合から顔を離す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁あかつきの星がたった一つ瞬またたいていた。
「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。』
(ー『夢十夜 第一夜』より)
この短編を読んだとき、小説ってラスト(結末)がすべてだな、、なぁんて思っちゃいました。そして漱石先生に脱帽してしまいました。

大真面目に愛や恋を語れる古き良き時代、、いや私たちも言えるハズ、、「月が綺麗ですね。」と。
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 夏目漱石が朝食はパン党だったのをご存じでしょうか。
​ロンドンに留学経験のあった漱石は、家族の他のものたちがご飯を食べていても、朝はトーストにジャム、紅茶に半熟卵を食べていたそうですよ。
『マリアンヌの夢』キャサリン・ストー

 病気になったマリアンヌは、自分が描いた絵のとおりに夢の中の世界が動いていく、不思議な鉛筆を手に入れます。夢で出会った少年マークといっしょに、怖い夢を克服していこうとするのですが、、。

 キャサリン・ストーはもともと精神科医で、子どもの内なる世界への興味と関心に溢れた異色のファンタジーを描きました。
 ストーは子どもの内部にも外部にも”恐るべきもの”が存在していることからけっして目をそらすべきでないという考えの持ち主でした。
 ファンタジーで恐るべきものと直面することで、子ども達の心の風通しをよくしたいという願いがあったようです。


 
お読みいただきありがとうございました。

 皆さま、夢ってよく見ますでしょうか?
 私は子どもの頃は、よく空飛ぶ夢をみていました。ちょうど二階くらいの高さのところを時々落ちそうになりながら飛んだり、屋根から屋根へ飛び移ったり、、。
 あとは何かに追いかけられる夢もよく見ていました。
 最近はすっかり夢は見なくなったので不思議です。

 それどころか、なかなか眠りにつけない日も、、そんな日は、ミントと蜂蜜を加えたホットミルクを飲んで身体をあたため眠りが訪れるのを待っています。
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